バブル崩壊後の長期的な景気の停滞により、我が国の新規大卒労働市場における雇用形態は大きく変容した。その中で登場した新しい雇用形態の1つが新卒段階での派遣雇用である。近年、景気の回復により、大卒者に対する需要は回復しているように見えるが、必ずしもいわゆる正社員ばかりが増えているわけではない。また、就職後の賃金等の労働条件を含む雇用環境自体は厳しくなっており、短期で離職する大卒者も依然として少なくない。 今年度は、これまで行ってきた労働供給者(学生)の視点からの新卒派遣の実態の分析に加えて、受入側の企業サイドに着目した考察を行った。学生や人材派遣会社の受け止め方と、実際に受け入れている企業の受け止め方の異同を探るためである。具体的には近年の新卒者の雇用動向と雇用形態、雇用後の移動状況、初期キャリア段階における能力の変容に関して、3000社程度を対象にした質問紙調査を実施した。以前行った類似の調査でも明らかになったが、学生や人材派遣会社に対する調査に比して、受入側の企業そのものの調査協力がなかなか得られず、また個別の部署で受け入れているために人事部が充分に把握できていないケースが多いため、回収状況は厳しい結果となった。しかしながら、景気回復という表面上の考察ではわからない大卒者の職業への移行形態の実態の一端を明らかにできた。
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