研究概要 |
本年度は,3か年の研究計画の初年度にあたるので,基礎的な研究として以下の3点を実施した。第1に,入学者選抜方法研究の基礎となる中国高等教育システム全体に関する文献・資料の収集をおこなった。国立国会図書館関西館,京都大学教育学部,広島大学高等教育研究開発センター等を訪問して関連資料を収集し,それらの資料の分析を進めた。これを通じて,中国社会が大きく変わるなかで高等教育も伝統的なあり方から変化することが求められている状況が明らかになった。とくに普通高等教育機関の改革に関しては,「中国:資金調達ルートの多様化と効率性の向上をめざす改革」(『比較教育学研究』第30号,32-43頁)にまとめた。第2に,上述した図書館・機関において,入学者選抜方法改革に関する研究成果の収集と分析をおこなった。本年度は中国とわが国,それから台湾の入学者選抜方法を対象とした研究成果を主に収集・分析した。中国,台湾とわが国には統一的な入学試験を基礎としながら選抜方法の多様化をめざし,とくに自己推薦型選抜の導入を進めているという点で共通点があると同時に,改革内容や方法には相違点もあることが明らかになった。第3に,中国の入学者選抜方法に関する聞き取り調査を実施した。聞き取り調査をおこなったのは北京師範大学と北京教育学院であり,他の機会を利用して北京師範大学附属中学や中国人民大学附属中学にも訪問した。第2および第3の作業を通じて,中国における入学者選抜方法の現状を基本的に理解するとともに,個別事例について具体的に検討することができた。これに関しては,「新入生募集制度改革」(黄福涛編『1990年代以降の中国高等教育の改革と課題』(高等教育研究叢書第81号,89-97頁)を執筆した。
|