教員志望学生を対象とした実験を実施し、傾聴的態度の表出にかかわる規定因を探った。具体的には、卒後の進路として教員を志望する女子大学生が聴き手としてふるまう対話場面をビデオで撮影し、被験者の対話時の行動を詳細に検討して符号化・数量化した上で、(1)同じ実験場面で話し手としてふるまった研究協力者の、やりとりのスムーズさ及び被傾聴感に関する評定値をコミュニケーション促進の程度の測度として、この評定値と被験者との行動スコアとの関連、及び(2)被験者の行動スコアと性格特性・共感性及び社会的スキルとの関連の2点について、主に相関分析の手法を用いて検討した。これらの分析により明らかになったことは以下に示す通りである。 1.聴き手である被験者の視線が一定方向に向けられる回数とその持続時間や、口もとを手で触るなどの自己接触行動の頻度とその持続時間が多い/長いほど、話し手にとっての話しやすさや被傾聴感の程度が低い。 2.TEGの結果より、視線行動・自己接触行動の頻度とその持続時間が多い/長いほど、他者に対する保護的・許容的自我状態を示すNP得点は低く、その一方で他者順応的・自己否定的自我状態を示すACスコアは高くなる。 3.情動的共感性尺度の結果より、感情的あたたかさ尺度得点は笑顔の持続時間が長いほど高く、自己接触行動の頻度とその持続時間が多い/長いほど低くなる。 4.日本語版SSI(社会的スキル尺度)の結果より、情緒的感受性得点が高いほど視線を下に向ける行動の頻度や持続時間が少なく、社会的表現性得点が高いほど視線を自分の右下方向に向けている持続時間が長い。 上述したこれらの研究成果については、日本カウンセリング学会第38回大会、及び東北心理学会第59回大会において発表の予定である。
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