本年度は、(1)平成16年度の研究成果を学会で発表するとともに、(2)データをさらに蓄積して、話し手がより話しやすく、被傾聴感をより強く感じるコミュニケーションと聴き手の行動との関連を明らかにし、(3)コミュニケーション促進に関連する行動を聴き手役が意図的に多く表出することによって、話し手の話しやすさや被傾聴感が実際に高まるのかどうか検討することを試みた。詳細は、以下の通りである。 (1)平成16年度に分析完了した話し手1名の聴き手10名に対するデータより、聴き手が視線を一定方向に向けたり、自己接触行動を示したりする頻度が多く、持続時間が長いほど、話し手の話しやすさや被傾聴感の程度は低いことがわかった(日本カウンセリング学会第38回大会、同発表論文集199頁)。また、「対話開始時の親密感」には話し手の「自己接触の回数が少なさ」が、「話しやすさ」と「被傾聴感」には「自己接触の回数が少なさ」と「瞬きが多さ」、「対話終了時の親密感」には「深い頷きの回数が少なさ」と「瞬きが多さ」が各々影響を及ぼしているという結果を得た(東北心理学会第59回大会、東北心理学研究第55号、印刷中)。 (2)話し手2名分の、延べ60名の聴き手に対する評定値と聴き手の行動との関連を分析したところ、コミュニケーション促進と相関がみられた行動項目が話し手によって異なり、話し手の個別性を考慮した働きかけを重視する必要のあることが明らかになった。 (3)(2)で得られた行動項目をもとに、話し手2名各々について特定の行動を増やすよう聴き手に教示して実験を行ったところ、話し手のうち1名のデータにおいて、聴き手にとって自然な態度で聴く条件よりも(2)で得られた行動を増やす条件で、話し手のコミュニケーションに対する有意に高い評価が得られた(片側検定、10%水準)。
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