本研究の目的は、読書指導研究を進展させていくために、研究に用いることのできる読書の評価を検討・開発することである。本年度は以下の4点のことを行った。 (1)南アフリカにおけるリテラシーの評価と教育課程の関係を調査した。 南アフリカは、11の言語を持つ「マルチリテラシーズ」国家である。この国の学習指導要領は評価項目を含んだ表記になっている。そのことが、この国の読書指導の評価場面にどのように生かされているかを調査した。 (2)我が国の教師が行うことのできる読書力評価について、新潟県国語教師の会合に出席して、我が国の読書指導研究に役立つ形を提案した。 これまで、本科研費研究で、OECDのPISA、オーストラリアのDART、オーストラリア・クイーンズランド州のリテラシー・テスト、イギリスのナショナル・テスト、アメリカのNAEP、アメリカ・イリノイ州のテストISAT、その他の語彙力テスト、読解テスト、診断評価などを調べてきた。その成果を生かし、新潟県の小学校における一斉テストの新しい形を提案した。 (3)IEA (International Association for the Evaluation of Educational Achievement)による国際読書力テストPIRLS (Progress in International Reading Literacy Study)の分析し、論文として発表した。 義務教育修了段階の国際テストPISA、これまで調べてきた各国の国内テストと、PIRLSを比較し、読書力評価としての特徴をまとめた。また、PIRLSを用いて読書指導の効果を測定する準備を整えた。 (4)国際的な視野から読書指導研究を進めていくための読書文化と評価との関係について論じた論文を発表した。 以上のように、最終年度である本年度は、読書文化という広い視野からそれぞれの国に応じた読書力評価を検討することができた。そして、(2)(3)を中心のように、リテラシー育成の読書指導研究に用いることのできる読書力評価を、我が国で展開可能な形として開発するところまで到達したと考えている。
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