研究概要 |
本研究の目的は,教師が自らの<授業スタイル>を構築していく過程を,ライフヒストリー的アプローチによって事例研究を積み上げながら明らかにしていくなかで,教師集団における教師文化(あるいは学校文化)と,個々の教師における授業力量の形成過程との相互作用の関係を問うことにある。 ここで言う<授業スタイル>とは教師の授業づくりにかかわる無数の意思決定の集積として暫定的に定義する。さらに<教師文化>とは,その学校独自の<組織文化>ともいうべきものであり,個々の教師の実践創造や実践研究を支える<暗黙知>と<形式知>の様相をなすものとして暫定的に定義する。 本年度は申請者が過去8年間にわたって授業研究を行ってきたN小学校(附属)に研究協力を依頼し,了解を得た教師6名を対象としたフィールドワークを行った。N校を研究のフィールドとして選んだ理由としては,(1)教師の異動がほぼなく,本校に着任した教師たちの多くは定年退職を迎えるまで本校において実践を積み重ねていくため,<授業スタイル>の構築過程における教師文化(学校文化)との相互作用がとらえやすいという点,(2)校内研修制度も,文字言語によって定型化された<学校文化=学びの文化/学びの型>も明確には存在せず,しかし個々の教師たちの<授業スタイル>に共通するある種の型が存在することから,個々の<授業スタイル>間の共通性と相違性の両者を研究対象にすることが可能であるという点,が挙げられる。 研究方法としては,現在の授業実践の参加観察および実践者への半構造化インタビューに加えて,実践者の過去の実践記録の蒐集・分析という3つの異なる手法を組み合わせたトライアンギュレーションを採用した。研究実施期間は2004年5月〜2005年3月である。なお,研究協力者の6名の教師の構成は男性5名,女性1名で,N校在籍年数は9〜24年(30〜50代)である。本年度は,6名の教師の授業実践(研究専門教科ならびに総合学習、朝の会等)を長期継続的に参加観察し,個々の教師の<授業スタイル>の特徴を描き出すことから研究に着手し,事例のデータ収集までを成果とした。
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