研究概要 |
本研究は,小学校段階の問題解決における,「数学的意味づけ(問題解決の手がかりや根拠を数や図形の世界の事実に求めること)」と「現実的意味づけ(問題解決の手がかりや根拠を(量などの)現実世界の事実に求めること)」を対置させてその役割や指導方法について検討しようというものである。 本年度は,平成17年度に続き,「分数の除法」についての「数学的意味づけ」,「現実的意味づけ」の実態調査および授業分析を行った。平成17年度の調査と同じ教師が「分数÷分数」の授業を行い,その授業を受けた児童57名に,「除数が除法の計算のしかた」の説明として,「現実的意味づけ」と「数学的意味づけ」を例示し,その理解度を尋ねた。そして,別の数値の除法を提示し「(例示された方法を使って)計算の方法を知らない人に,計算の方法を説明する」という状況を提示し,どの例示の方法を選択するか,また選択した方法を正しく使って説明できるかを調べた。 実態調査と授業分析の主要な結果は次の通りである。 ・比例的推論を活用した「現実的意味づけ」の方をわかりやすいと感じた児童と,除法の性質を活用した「数学的意味づけ」の方をわかりやすいと感じた児童の割合は同程度であった。 ・別の数値における計算方法の説明においては,「現実的意味づけ」による説明を試みた児童は13名(22%),「数学的意味づけ」よる説明を試みた児童は28名(49%)であった。また,立式が誤っていた場合も含めると19名(33%)の児童が「数学的意味づけ」を用いて「分母と分子を入れかえた数をかければよいこと」を正しく説明することができた。 ・上の結果を含めた調査結果は,授業における良い点,問題点と考えられる点と整合的であった。
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