研究概要 |
剰余体が完全とは限らない離散付値環の拡大で生じる分岐の性質を,p進解析的手法を使って調べることが本研究の目的である。特にこのような離散付値環の商体のガロア表現に対して定まるAbbes,斎藤によって定義された分岐フィルトレーションと,このガロア表現から生ずる微分加群に対して定まるChristol, Mebkhoutによって定義されたp進傾斜フィルトレーションとが一致するという予想を証明することが主なる目標であった。これらのフィルトレーションは,どちらも剛解析空間の連結成分の集合によって特徴付けられ,この二つの集合の間に全単射が存在することを示せば予想が従う。 今年度の目標は,この予想を剰余体が完全な場合に従来の結果を使わずに証明することであった。この問題は完全には解決できなかったが,代わりに一般の場合にこれらの集合の一方から他方への全射を構成した。それにより,特に一次元の場合にはガロア表現のスワン導手と微分加群の非正則度との一致のみから直接両者のフィルトレーションが自然に従うことが証明できる。 また単射性についても,剛解析空間についてのある仮定のもとで証明できることを見た。 更に,このような位相的な性質とp進微分方程式の解空間との関係についてもいくつかの性質を証明した。これらの結果については2005年2月にドイツのミュンスター大学で行われた研究集会において発表を行った。
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