研究概要 |
算術幾何平均楕と楕円積分の関係の高次元化(他変数化)を目指し、Picard曲線の周期積分と保形関数の研究を行った。 周期τの楕円曲線の分岐点はtheta関数により次のように記述できる: y^2=x(x-θ_<00>(τ)^4)(x-θ_<01>(τ)^4) そしてtheta関数は次の関数等式を満たす: 2θ_<00>(2τ)^2=θ_<00>(τ)^2+θ_<01>(τ)^2,θ_<00>(2τ)^2=θ_<00>(τ)θ_<01>(τ) 従って、算術幾何平均は楕円曲線の2-isogenyに付随するtheta関数の公式と考えられる。 Picard曲線は、複素超球上の点(u, v)をパラメータとして y^3=x(x-θ_0(u, v)^3)(x-θ_1(u, v)^3)(x-θ_2(u, v)^3) と表される。ここでθ_k(u, v)は、Siegelのtheta関数を用いて具体的に表示される、複素超球上の保形関数である。このPicard保形関数達が満たす、あるisogeny公式を決定した。この公式は算術幾何平均の多変数化と考えることができる。実際、公式の一つは 3θ_0((√3)u,3v)=θ_0(u, v)+θ_1(u, v)+θ_2(u, v) であり、これは3変数の算術平均の形になっている。変数(Picard曲線の周期)の((√3)u,3v)は、 Picard曲線のJacobi多様体が持つ自己準同型に関係したisogenyによるものであり、Picard曲線の代数的対応の具体的記述にも役立つと思われる。古典的な算術幾何平均は楕円積分Gaussの超幾何関数により表現されるが、このPicard曲線を用いた算術幾何平均はAppellの2変数超幾何関数F_1により記述されると思われる。
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