研究概要 |
前年度に引き続き、志賀弘典氏(千葉大学)と算術幾何平均楕と楕円積分の関係の高次元化(他変数化)を目指し、Picard曲線の周期積分と保形関数の研究を行った。Picardモジュラー関数のisogeny公式を基にして、算術幾何平均の3変数類似とAppellの超幾何関数F_1(1/3,1/3,1/3,1)の関係式を発見した。 Picard曲線は、複素超球上の点(u,v)をパラメータとして y^3=X(x-θ_0(u,v)^3)(x-θ_1(u,v)^3)(x-θ_2(u,v)^3) と表される。ここでθ_k(u,v)は、Siegelのテータ関数を用いて具体的に表示される、複素超球上の保形関数である。関数 θ_0((√<-3>)u,3v),θ_1((√<-3>)u,3v)^3±θ_2((√<-3>)u,3v)^3 はθ_k(u,v)(k=0,1,2)の多項式として表すことができ、その多項式を用いた反復代入操作の極限はF_1(1/3,1/3,1/3,1)と一致する。この事実はBorwein等によって発見されたcubicAGMの一般化になっており、超幾何関数F_1(1/3,1/3,1/3,1)の3次の変数変換の公式を導くことができる。超幾何関数の2次の変数変換の公式は多種発見されているが、3次の場合は珍しく、他変数では具体例がなかったため興味深い結果となっている。この研究結果について以下の講演を行った。 ・多変数関数論サマーセミナー 新潟県(湯沢グランドホテル)「ある3項算術幾何平均とAppellの超幾何関数」 ・Padova大学(伊)数学教室でのセミナー 「AGM and hypergeometric functions」
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