研究概要 |
これまで旗多様体のcohomology環とその量子化のモデルを、Fomin-Kirillovの二次代数やNichols-Woronowicz代数と呼ばれるbraided Hopf algebraを用いて構成してきたが、今年度の研究ではそのK理論版への拡張に関して大きな進展があった。Nichols-Woronowicz代数の中でYang-Baxter方程式をみたす元を用いて乗法的Dunkl元と呼ばれる元の族を導入し、それらが生成する可換な部分代数として旗多様体のK-環を構成した。この構成においては、Nichols-Woronowicz代数上の微分作用素が本質的な役割を果たす。また、Nichols-Woronowicz代数に作用する作用素として量子化を定義することができ、旗多様体の量子K環が同様の構成で得られるものと期待される。旗多様体の量子K環は差分戸田方程式と密接な関係があり、定義関係式が差分戸田系の保存量と対応している。我々の構成で用いられるNichols-Woronowicz代数上の微分作用素も差分的な性質を持つ作用素であり、両者の関係を明らかにすることは今後の課題である。 また、旗多様体のcohomology環は対称群が作用する有限次元代数の例であり,Specht多項式と呼ばれる多項式が既約成分の標準的な基底を与える。このような状況の類似として、量子群とHecke代数のある多項式表現を考案し、その既約分解をSpecht多項式のq-類似を用いて具体的に記述した。ここで用いられる手法は、有限次元可換代数の研究に用いられるLefschetz性のq-類似とみなすことができるものであり、もともとは強Lefschetz定理の抽象化として導入されたものである。
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