主に旗多様体のK環のモデルとワイル群上の非可換微分構造との関係について研究を行い、一般のルート系に対する旗多様体のK環をある種のニコルス・ウォロノヴィッツ代数の部分代数として実現することができた。これは昨年度のA.N.Kirillov氏との共同研究において得た結果の一部の一般化になっており、先行する研究で得た構成に対して概念的な説明も与えたことになっている。このモデルのアイデアはalcove pathという概念から一連の可換な元の族をニコルス・ウォロノヴィッツ代数の中に構成することであり、従ってC.Lenart氏とA.Postnikov氏による旗多様体のK環におけるMonk型の公式と関係している。また、可換性はYang-Baxter方程式から従う。注目すべき点は、このような旗多様体のK環の記述が量子K環に対しても同様に行い得るであろうということと、A型の場合に量子Grothendieck多項式の理論(C.Lenart氏との共同研究math/0608232)と結びついていることである。その他に、幾何学に対する離散的視点からのアプローチへの興味という観点からアメーバの概念及びそれらの超離散化についての論説を発表した。また、以前の研究である種の有限次元可換代数のLefschetz性をSchur-Weyl dualtyの観点から考察したが、そのテーマに関する論文が出版された。このテーマはLefschetz性を持つような有限次元可換代数を仮想的な多様体のコホモロジー環とみなして研究するという視点と結びついており、例えば有限Coxeter群(有限複素鏡映群)の場合には仮想的な旗多様体の幾何の研究に繋がるものである。
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