本研究の目的は、代数体のガロア群に関する岩澤加群を、いくつかの具体的な特殊元を用いてその性質を調査することである。古典的な円分体の場合は、特殊元とは円単数やGauss和やp-進L関数であり、岩澤加群としてのイデアル類群や不分岐アーベル拡大のp-部分が調査の対象である。これらの対象に関する未解決の予想として、p-円分体のVandiver予想や総実代数体のGreenberg予想が挙げられる。いずれも実代数体においてイデアル類群は大きくないことを予想している。しかしながら、Vandiver予想に関しては期待値の面からは必ずしも信頼に足る予想であるとはいえないと考えている。そこで前年度に引き続き、有理数体を二次体に置き換えて、判別式が200以下の二次体の範囲、素数は100000以下の範囲で、類似の問題について計算機によって調査した。その結果、Washingtonによる期待値の予想をさらに裏付ける結果となった。また、実円分体のイデアル類群のp-部分を高速に計算する手法に発展させ、ランクが2となる興味深い実例を与えた。 また、特殊元のひとつであるp-進L関数に関連して、部分群Stickelberger元の計算を行った。この元を用いて各円分体のtameなp-次巡回拡大におけるp-整数環の正規基底が存在するかどうかを判定することができる。多くの円分体と素数について、そのような基底が存在しないことを示すことができた。
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