研究概要 |
平成17年度は,一般バーマ加群におけるカペリ恒等式に関連する研究を主に行った.当年度の研究計画の主眼は,A型とは限らない古典型リー代数,つまりB型,D型(直交リー代数)や,C型(斜交リー代数)に対しても一般バーマ加群におけるカペリ恒等式を導きたいということであった. カペリ恒等式とは不変微分作用素環におけるある種の恒等式である.カペリによる元々のカペリ恒等式(1890)は,1次の掛け算作用素を成分にもつ行列の行列式と,1階の微分作用素を成分にもつ行列の行列式の積を,リー代数の作用で書き表すものであったが,一般バーマ加群におけるカペリ恒等式では,2階以上の微分作用素も行列式に現れる.当年度の研究の主要な成果は,この状況と類似して,2次の掛け算作用素や,2階の微分作用素が行列式に現れる,対称対のカペリ恒等式と呼ばれる恒等式を得たことである.この恒等式も,不変微分作用素をリー代数の作用で書き表すものであり,また,A型とは限らない古典型リー代数にも対応して対称対のカペリ恒等式は3種類得られた. 一般バーマ加群におけるカペリ恒等式と,対称対のカペリ恒等式はまったく同じ恒等式というわけではないが,微分作用素の階数からみても,対称対のカペリ恒等式は,一般バーマ加群におけるカペリ恒等式を得るための手掛りとなることは間違いなく,さらに恒等式を導出するための手法にも共通点が多い. この成果は平成17年9月に論文雑誌に投稿済みであり,また,平成17年10月にソウル大で開催された第8回ソウル大-北大ジョイントシンポジウムなどで講演も行った.
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