研究課題
対合付きK3曲面に対して筆者が解析的トーションを用いて2004年に導入した不変量(モジュライ空間上の関数)の具体的な公式を41個の双曲型格子に対して求めた。対合付きK3曲面の位相型は全部で75個存在するので、その中の41個に対して不変旦が決定された事になる。この不変量はモジュライ空間上の保型形式のPeterssonノルムとして表示される事は既に2004年に筆者により知られていたが、今年度の研究によりこの41個の場合には以下の著しい性質が観察された。・不変量に対応する保型形式はBorcherds積と井草保型形式の秋に因数分解される。・上のBorcherds積を定義するのに用いる楕円モジュラー形式は普遍的なエータ積とテータ関数の積に書ける。エータ積は楕円種数の普遍的な分母として現れる関数の適当な冪乗であり、テータ関数の冪はK3曲面を対合で割って得られる商曲面の2次元Betti数のみにより定まる。解析的トーションから得られる保型形式がこのような統一的表示を持つという事実は全く新しく、背後にその理由を説明する理論がある事を予感させる。関連して、Del Pezzo曲面のKahlerモジュライ上にノルムが-1のHeegner因子を特徴付ける保型形式を構成した。この保型形式は対合付きK3曲面の解析的トーションから構成され、結果としてある種の対合付きK3曲面とDel Pezzo曲面の間にミラー対称性的な現象が見いだされた。同様の現象を対合付きK3曲面の間で定式化することができる。Picard格子の階数が10以上の対合付きK3曲面に対して、そのKahlerモジュライ上に判別式軌跡を特徴付ける保型形式を解析的トーションを経由して構成できることがわかった。
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