研究概要 |
本年度はバーゼル大学のSebastian Baaderとquasipositive曲面に関する共同研究を行い,ルジャンドルグラフとquasipositive曲面に関する論文を書いた。論文タイトルはrLegendrian graphs and quasipositive diagrams」で,プレプリントサーバのmath.GT/0609592よりダウンロード可能。 Quasipositive曲面はL.Rudolphにより,特異点のファイバー曲面のような複素構造の境界に現れる曲面を一般化したものとして導入された。Rudolphはquasipositive曲面の本質的な部分曲面がquasipositiveであること,および,quasipositive曲面の村杉和がquasipositive曲面であることを示した。この系として,ザイフェルト曲面がquasipositiveであるという性質は正のホップバンドのプラミングとその逆操作において不変であることが分かる。他方,接触トポロジーとオープンブック分解の研究において,E.Girouxは同じ接触構造と両立するオープンブック分解が正ホップバンドのプラミングとその逆操作を繰り返して移り合うことを示した。これらの結果の帰結として,M.Heddenは3次元球面内のファイバー曲面が標準的接触構造と両立することと,その曲面がquasipositiveなファイバー曲面であることが同値であることを示した。 上のBaader氏との共同論文では,ルジャンドルグラフとquasipositive曲面との関係を明確化し,そのアプリケーションとしてHeddenの結果の,正ホップバンドのプラミングを使わない,より直接的かつ簡明な別証明を与えた。論文の後半では,ルジャンドルグラフのルジャンドルイソトピー,quasipositiveダイアグラムについてのRudolphが与えた変形,およびザイフェルト曲面のambientイソトピーの関係を考察し,特に各々の変形が同値でないことを示した。
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