研究概要 |
本研究の目的は,統計多様体上のチェビシェフベクトル場,およびチェビシェフ作用素の持つ幾何学的性質を解明することである.また,統計学など関連する数理科学分野への応用なども研究の目的とする.その中で平成16年度は,特に統計多様体上の共役双対構造に絞り,その幾何学とチェビシェフ作用素,およびアファイン極小曲面論との関連の解明を目標とした. 現時点においては論文などで発表する成果は得られていないが,アファイン微分幾何学や極小曲面論の専門家らと情報交換等を行ないながら研究を遂行している.なお,付随する研究目標である統計学への応用に関しては,研究の進展も見られる.具体的には,統計的推論の漸近理論において,最尤推定量とベイズ推定量の推定の良さを比較する問題を考えた.相対エントロピーリスクを推定量の良さの基準とした場合に,ベイス推定量が最尤推定量に優る場合の条件式は知られていたが,この条件式をチェビシェフ作用素を始めとする幾何学量での書換えを行なった.現時点では厳密な結果は得られていないが,推定する統計モデルがアファイン極小曲面と同じ幾何学構造を持っている場合には,ベイズ推定量が最尤推定量に勝るという見込みが得られている.
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