研究概要 |
本研究は,統計多様体上のチェビシェフベクトル場,およびチェビシェフ作用素の持つ幾何学的性質を解明することを目標とする.また,統計学など関連する数理科学分野への応用なども研究の目的とする.特に平成17年度は昨年度に引き続き,統計多様体上の共役双対構造の幾何学を解明,共役双対構造とチェビシェフ作用素,およびアファイン極小曲面論との関連の解明をめざした.さらに,ベイズ統計学を始めとする数理科学の諸分野への応用も考えた. 上記研究目標に対し,北海道大学の古畑仁氏との研究討論をはじめ,数理科学分野の研究者との研究交流や情報収集を行いながら研究を遂行した. 今年度は,特に統計学との関連解明についての進展が見られた.チェビシェフベクトル場は最尤推定におけるバイアス補正項に相当することがわかっていたが,バイアス補正最尤推定量の共分散行列から定まるリーマン幾何学的な2次形式は,多様体の次元やピック不偏量などの幾何学量で表わせることを示した.この結果は「2005年度福岡大学微分幾何学研究集会」において,口頭発表している.なお,本研究の基礎的な理論部分は他の研究分野からも注目されつつあり,国際研究会「2^<nd> International Symposium on Information Geometry and Its Applications」を始め,複数の研究集会において研究の途中成果を報告している. 統計多様体上の共役双対構造については,今年度は発表に至るほどの成果は得られていないが,等積構造を持つが共役双対構造を持たない確率分布族が発見されており,今後の研究の発展を見込んでいる.
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