研究概要 |
今年度は,閉曲面上の周期的写像とLefschetz fiber空間について以下の研究を行った. 向き付けられた閉曲面上の周期的写像の共役類は組み合わせ的なデータを用いて完全に記述される.そこで,GAPを用いて,種数15までのリストを作ったところ,この範囲で種数に応じて単調増大でないこと,種数が3の倍数の時に大きく増大することなどが観察された. 向き付けられた閉曲面上の向きを保つ同相写像はright hand Dehn twistの積で表されることが知られていることから,周期的写像を表すデータを基に周期的写像をright hand Dehn twistの積として表す方法について,石坂瑞穂氏(早稲田大学)と共同研究を行った.その結果,向き付けられた閉曲面の種数が4以下の場合については,ほとんど全ての周期的写像のright hand Dehn twistによる表示を得る事が出来た.ここでは,代数幾何学的な考察から得られるright hand Dehn twistの本数の評価内にあるLickorish generatorの積の内からホモロジー群への作用が周期的なのものを探し出し,実際に周期的である事を逆井卓也氏(東大数理)の開発したTeruaki for Mathematicaを用いて確認するという方法,周期的写像を表すデータによって決まる多角形分割へのDehn twistの作用を調べるという方法を用いた. 周期的写像をright hand Dehn twistとして表すことから,right hand Dehn twistの間の関係式が得られ,それを用いてLefschetz fiber空間を構成できる.このようにして構成された空間の指数を,遠藤久顕氏(大阪大)や永見誠二氏(摂南大非常勤)の開発した方法を用いて計算したところ,上の方法により非正則なものが構成できることが分かった.
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