研究概要 |
周期的写像のDehn twistによる表示を求め,さらにLefschetz fiber空間の実例を構成した. 有向閉曲面上の周期的写像の共役類の組み合わせ的なデータを用いた完全な記述が,Jakob Nielsenによって得られている.一方,有向閉曲面上の任意の向きを保つ写像のイソトピー類がDehn twistの積として記述されることが,Max Dehnによって示されている.いずれも古典的な結果であるにもかかわらず,周期的写像に対し,組み合わせ的なデータに対するDehn twistの積による具体的な表示とそれを求める方法は,超楕円的な周期的写像に対する石坂瑞穂氏(早稲田大学)による結果以外に知られていない.本研究では,平面曲線の特異点のMilnor束のモノドロミー,特に,A'Campoによるdivideの理論に帰着させることによりDehn twistによる表示を得る方法を開発し,その方法を基に,周期的写像の或る無限の系列について,Dehn twistによる表示を得た.なお,この方法は,全ての周期的写像に適用できるわけではなく,現在,更なる改良を進めるべく研究中である. 周期的写像のright handed Dehn twistによる表示から,right handed Dehn twistの間の関係式が求まり,さらに,それを利用することでLefschetz fiber空間の実例を構成することが出来る.佐藤好久氏(山口大学)は種数2のLefschetz fiber空間でminimalでないもののtableを構成したが,その中の多くに対する実例が知られていなかった.種数2の閉曲面上の周期的写像のright handed Dehn twistによる表示を用い,阿原一志氏(明治大学)と逆井卓也氏(東京大学)により開発されたソフトウェアー"Teruaki for Mathematica"を利用することで,幾つかの実例を構成した.
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