前年度に引き続き、フラクタル格子におけるパーコレーションについての研究(1.2.3)を中心として行った。 1.一般化されたシェルピンスキーカーペット格子において、浸透する方向に制限をつけたパーコレーションモデルについて研究し、格子の構造および浸透する方向性と相転移の消滅・非消滅との関連性を調べた。その結果、相転移の消滅に関して従来よりも広い十分条件を得たが、まだそれ以外の場合で相転移の有無が判別できていないものが残されており、完全な解決には至っていない。 2.パーコレーション相転移点の値の評価について研究した。特にフラクタル格子ではグラフの遠方の影響が数値計算に向かずあまり先行結果がない。本研究では浸透する状況をマルコフ過程で近似することでいくつかの評価値を得た。 3.フラクタル格子上での変形されたパーコレーションモデル(AB percolation、bootstrap percolation、etc.)について考察を行った。1.2.の研究とも関連するが、フラクタル格子における確率モデルを考えるに際し、グラフに平行移動不変性がないためエルゴード定理などいくつかの解析的手段が使えなくなっている。その点を1つ1つ解決しようと試みている。いくつかの考察や数値実験、および他の研究者の結果によってフラクタル格子に正方格子とは異なる現象があることがわかってきたところである。 4.Domany-Kinzelモデルと呼ばれるパーコレーションモデルの浸透確率の単調性について研究した。その結果、初期状態によっては単調性が崩れる可能性があることを見つけ、元の問題の解決には初期状態を無視できないということがわかった。
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