連続な経路全体の空間がウィーナー空間であるのに対して、右連続でかつ左極限をもつような曲線全体の空間はウィーナー・ポアッソン空間と呼ばれており、ともに確率論の中で重要な考察対象となる空間である。右連続かつ左極限をもつ曲線内の不連続点において、ジャンプが起こる方向にはかなり大きな自由度があるため、ウィーナー・ポアッソン空間の上でのマリアヴァン解析について、数多くのアプローチが既に存在する。マリアヴァン解析を経由して、確率関数微分方程式(過去の履歴に依存するような確率微分方程式)の解の分布に関する密度関数の性質(存在性および正則性)について、昨年度から引き続いて調べてきた。計画二年目にあたる平成17年度は、その中でも1990年代後半にJ.ピカール氏によって構築された枠組みを利用して、不連続な部分を含むような確率関数微分方程式の解に対して、その密度関数の存在性および正則性について調べた。それは、ウィーナー空間上でのマリアヴァン解析をウィーナー・ポアッソン空間にまで一般化するということにととまらず、従来から存在する方法では扱うことのできなかった(ジャンプ項を含むような)確率関数方程式のクラスに対しても、考察の範疇に含めることが可能という点で大変興味深いものとなっている。さらに、そこで得られた方程式の係数に関する条件は、ジャンプを含むようなマルコフ型の確率微分方程式、あるいは連続な確率関数微分方程式において既に得られている結果を含むようなものとなっている。
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