研究課題
本年度、私は量子論の基礎的諸問題について研究を行った。論文"Entangled Markov Chains generated by Symmetric Channels"においては、最近、ローマ大学のLuigi Accardiにより量子論におけるランダムウォーク(最もカオス的な振る舞い)とは何かを巡り提唱された無限系であるEntangled Markov Chainを取り扱った。この量子Markov Chainが実際にエンタングルしているか否かは知られていなかったが、対称的なチャネルによって生成されている場合には、特殊な場合を除き、隣接するサイトとは真にエンタングルしていることを、PPTcriterionにより示した。これは、この系が真に量子性をもつ系であることを意味している。また、論文"Information-Disturbance Theorem for Mutually Unbiased Observables"においては、量子鍵分配の安全性証明において本質的な役割を果たす情報撹乱定理について新しい形を導いた。これは、ある観測量について情報を得るような測定を行うと、それと非可換な観測量については必ず結果をランダムにしてしまうということをあらわしており、量子論の最も基本的な結果である不確定性関係の情報理論的表現とも捉えられる。その後、Quantum Bounded Storageの制限下での量子紛失通信の可能性を示したDamgaardらの研究において用いられた「確率型不確定性定理」の一般化にも成功し、研究会において発表を行った。
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Physical Review A
Reports on Mathematical Physics 56
ページ: 1
Open Systems and Information Dynamics 12
ページ: 261
Infinite Dimensional Analysis, Quantum Probability and Related Topics 8
ページ: 497
数理解析研究所講究録 1452
ページ: 114