研究概要 |
平成16年度の研究方針は2つ計画していた。背後過程の状態数をn=2に限定した場合と、背後状態数nのモデルに対してLatouche, takineの結果の適用した場合である。後者の研究については、現在文献調査中である。前者については、ネットフロー(入力率-出力率)に関する特殊な条件の下で解の陽表現を求めた。しかし、ネットフローに関する条件は非常に特殊であり、実用的とは言えない。今後状態数を増やしたモデルを解析するためにも、n=2のとき、余計な設定をはずして解析を行う必要がある。(数値的な解析は容易だが今後の拡張で使えない) 些細ではあるが、背後状態数が2の場合についてわかったことをまとめる。 定常方程式について 背後状態数がn個である場合について、適当な安定条件(連続状態マルコフ過程のエルゴード性)の下で、定常方程式を求めた。この問題は、求めたい量が2変数関数のベクトルであり、定常方程式は線形連立偏微分方程式を含む境界値問題である。定常分布の一意性より、1つ非負解を探せばよい。 (n=2)ここで得られた境界値問題は、背後状態0と1のネットフローの和が零になる場合(放物型偏微分方程式系)と、そうでないとき(双曲型)で解の構造が(従って、解法も)本質的に異なることが知られている。 放物型の場合 (容易)定常方程式の解(結合定常分布)は指数関数などの初等関数のみで表現できる。 双曲型の場合 (難)2変数で2元連立偏微分方程式を1変数の常微分方程式までおとすことが可能。詳しくここで述べないが、技巧的な変形による問題の分解、リーマンの方法が主な手法である。一般に微分方程式の解法は、領域内部の積分を行った後、境界条件や初期条件にあてはめて積分定数などの未知項を決定するが、偏微分方程式の場合、領域内部での積分が難しい。特に本モデルは連立偏微分方程式であり、電信方程式のように積分可能な形へ簡単に変形できない。一方リーマンの方法は、内部領域での積分を境界上のデータ(コーシーデータ)で表現する方法である。しかし、連立偏微分方程式に対応していない。リーマンの方法を適用可能にするために、偏微分方程式系や境界条件の背後状態についての分解を行う。(変数分離は不可)これによって幸運にもリーマンの方法が使用可能な2つの新しい境界値問題を得る。余った条件(積形式ネットワークにおけるトラフィック方程式に相当する条件)を用いて2つの未知関数(1変数)のどちらかを消去することで、常微分方程式を得ることができる。しかし、この微分方程式は0〜2階微分の項と第1種修正ベッセル関数で重みづけされた積分の項を含むため、簡単には解けない。今後の予定として、級数展開による方法と発見的方法の2つの方向から解を類推する予定である。
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