研究概要 |
今年度は,決定論的ネットワーク算法によるアプローチによって,FIFO multiplexerを流れる個々のフローの上限解析を行った.このモデルと出力過程の到着曲線については既存研究で2002年に報告されているが,FIFOサービスを表す効率的なサービス曲線が未知であった.その原因の1つとしてFIFOサービスのネットワーク算法に適合する定式化が行われていない.本研究では,注目するフローに対する最悪状況を作るために,離散化された時間区間内でのパケットの入力順序をFIFO規則の範囲内で変更した. 無限容量バッファモデル 本研究の目的は,サービス曲線の導出である.これまで,サービス曲線やそれを定義するために必要な(min,plus)-代数上の畳み込み演算子が,最大待ち行列長や遅延時間の導出に重要な役割を果たしていた.ところが,本研究によってFIFOサービスではサービス曲面(2変数関数)と二重畳み込みが必要であることがわかった.既存研究では,パラメータ付サービス曲線を用いてこれを記述しようとしているが,式の構造を加味していなかったため,過大評価を与えていた.本研究の結果は,出力到着曲線の一般形式を与えるだけでなく,最大待ち行列長や最大遅延時間等も容易に計算できる.より強い結果として,注目するフローの遅延は全体の遅延で抑えられることが別の視点から証明された. 複数閾値モデル 前年度の研究では,優先サービスを仮定して解析を行ったが,本年度はFIFOサービスを直接解析できるようになった.閾値モデルでは,サービス曲面ではなくサービス曲線で十分であることがわかった.また,優先サービスとFIFOサービスの比較も行った.競合フローの到着曲線が仮定されていなくても,閾値の制御によってトラフィック量の調節がある程度可能であることも示した. 本研究の結果は現時点で論文執筆中のため公刊されていない.(学会発表及び報文集のみ発表済)
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