研究概要 |
平成16年度における本研究の研究目標として、次のものが挙げられていた。第一に、増大作用素列に対する各点での弱収束に関する結果を得ること、第二に、これらの結果に対して変分不等式問題に関連する収束定理の検証をし,計算機での実装を視野に入れた上での改良点を模索すること、そして第三に、計算機による実験を試みることである。第一の目標については、Hilbert空間における増大作用素を、より一般なBanach空間上の作用素へと拡張した単調作用素に対する収束定理を得ることができた。とくに、Bregman関数を用いることにより既存のものを拡張した形で定義された射影およびリゾルベントについては、ノルムの凸性や微分可能性などが仮定されていない場合においても、別の関数を用意することにより定義が可能であり、より多くの場合について応用可能な命題を証明できたと言えよう。また、これらの一連の結果は、いずれも作用素列およびそれに付随する各作用素の零点集合の列に対する収束定理であり、ある種の近似定理とみなすこともできる。とくに、関数にある条件を加えることによって得られる強収束定理は、計算機への実装を可能にするものであると言える。一方、計算機による実験から得られる結果は、今回これらの数学的な命題を証明するための重要なヒントを与えることとなっており、集合値解析学的手法を用いた変分不等式問題の研究において一定の役割を果たしたと言える。
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