研究概要 |
本年度は主にマクスウェル・シュレディンガー方程式(MS)の時間大域的可解性について研究した.これはミクロな荷電粒子の運動とそれによって生じる電磁場の時間発展との相互作用を記述する方程式であり,数学的にも物理学的にも興味深い.(MS)の可解性については専攻するいくつかの結果があるが,それらは(1)時間局所適切性(2)エネルギー保存則とコンパクト性の手法を用いた時間大域的弱解の構成のいずれかに分類される.そして(1)における(エネルギー空間より狭いクラスでの)一意性を保証された解が時間大域的に存在するか,あるいはもっと強く,(1)で得られる解と(2)で得られる解が一致するかという問題は重要であるにもかかわらず長い間未解決となっていた.本年度の研究において私は東北大学の中村誠氏と共同でこの問題に取り組み,時間局所解の適切性をこれまでより広いクラスで証明し,さらにその解が時間大域的に存在することを証明した.但しエネルギー有限な弱解が今回得られたものと一致するかどうかは分からない.証明に際しては,コッホとツヴェトコフによって導入された修正型ストリッカーツ評価を改善し,それをシュレディンガー部分に適用することによってシュレディンガー方程式の平滑化効果を生かした評価を行った.これにより解をなめらかさの低い空間で構成することが可能となり,また解が爆発しないことを示す際に必要なノルムが総エネルギーを用いて制御できるようになった.
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