研究概要 |
完全非線形の楕円型・放物型偏微分方程式に対し,その境界値問題の可解性および解の性質について研究を行っている.本年度行った研究とその成果を以下に述べる. まず,昨年度に引き続きk次基本対称関数(k=1,…,n,ここでnは空間次元)により定まる曲率方程式(以下,k-曲率方程式と呼ぶ)について研究を行った.与えられた領域の境界に近づくとき解が無限大に発散するという境界条件(境界爆発条件)を課したk-曲率方程式を考察し,粘性解のクラスにおける解の存在・非存在,および境界付近における解の挙動に関する結果を得た.解の存在・非存在に関する結果はk-曲率方程式の特別な場合である平均曲率方程式(k=1)に関するGrecoの結果の拡張となっているだけでなく,解の挙動に関する結果は平均曲率方程式の場合を含め新しいものである.これらの結果をまとめた研究論文は学術雑誌への掲載が認められ,現在印刷中である. さらに,本年度は一般の完全非線形楕円型・放物型偏微分方程式についても研究を行い,ある条件を満たす完全非線形方程式の粘性解において,等高面は常に除去可能であることを証明した.この種の研究はこれまで完全非線形方程式に対しては殆どなされていなかったものであり,また本結果は半線形および準線形方程式に対する既知の結果の多くを含むものである.このことについての論文を現在投稿準備中である. 最終年度となる来年度はこれらの方程式の境界値問題の可解性を引き続き考察するとともに,完全非線形方程式の重要なクラスに対して系統的な解析手法の確立を目指す.
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