2005年度の研究成果は以下の通りである。これらの結果について発表・討論するために国内外の研究集会に積極的に参加した。とくに二回の海外出張において多くの著名な研究者と交流したことは研究の発展のために大変有意義であった。 ・正規j代数のシンプレクティック表現についての自身の結果を応用して左対称代数やT代数の行列実現の方法を確立した。これによって等質錐に付随する相対不変式を行列式を用いて簡明に表示することが出来た。 ・正則錐や実ジーゲル領域を含むクラスである拡張ジーゲル領域なる概念を導入し、そのヘッセ領域の意味での双対が再び拡張ジーゲル領域になることを示した。一方、等質ヘッセ領域は正規ヘッセ代数と一対一に対応することが知られているが、この事実を用いて全ての等質ヘッセ領域は拡張ジーゲル領域としての実現をもつこと、および双対領域には双対な正規ヘッセ代数が対応することを証明した。 ・ヘッセ計量の研究で培った計算技術は複素ジーゲル領域上の解析においても有効である。その産物の一つとして、等質とは限らないジーゲル領域上のベルグマン計量のポテンシャルで、勾配の長さが一定という著しい性質をもつものを具体的に構成することに成功した。 ・分裂型可解リー群の複素解析的誘導表現がユニタリ化可能である必要十分条件を考察した。中心的なアイディアは、問題を等質ジーゲル領域上の解析に帰着されることである。しかも、研究が進展するにつれて等質ヘッセ領域の幾何との興味深い関連も明らかになりつつある。
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