平成18年度の主な研究成果は以下のとおりである: ・等質とは限らないジーゲル領域のベルグマン計量について標準的なポテンシャル函数の勾配の長さを具体的に計算し、それが定数であることを示した。この結果は複素領域上の2乗可積分コホモロジーの存在と深い関係がある。 ・非等質ジーゲル領域のベルグマン核の新たな計算例を与えた。さらに、この計算のもとになるペイリー・ウィーナー定理についてヘッセ領域の双対性の立場からの解釈を見出した。、 ・等質錐に付随する管状領域と基本相対不変多項式に関する或る代数的な不等式について、九州大学の野村隆昭教授と共同研究をすすめた。 ・等質錐の行列実現についてのこれまでの結果を応用して、任意のT代数を行列の部分空間に具体的に実現する方法を与えた。この枠組みの中で擬逆元写像が自然に定義できることが特に興味深い。 ・概均質ベクトル空間の相対不変式を計算する初等的な方法を考案した。この方法は簡約とは限らない、かなり一般的な場合に適用できると考えられる。 ・ハイゼンベルグ群上の調和解析について新しい道具を考案した。これを用いて、等質とは限らないジーゲル領域に対して一般化ツェゲー核なるものを定義した。 ・アンジェ大学のP.Graczyk教授とともに、一般の開凸錐に付随するウィッシャート分布の自然な定義を考案し、その平均や共分散を計算した。等質錐の場合のリース超函数との関連も明らかにした。
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