今年度の前半は、研究課題の中でも「Hormander条件のもとでCalderon-Zygmund予想が成り立つかどうか」に問題を絞って考察し、谷垣がオーガナイザーを務めた研究集会「数値調和解析や画像解析と計算数理」(7月、東京都立大)に、この問題について研究している武漢大学のQ.X.Yang氏を招待し、ディスカッションを行った。その結果、問題を完全に解決することはできなかったものの、条件を強めれば予想が成り立つことと、条件を弱めれば予想が成り立たない例を作れることがわかった。 後半は、研究実施計画にも書いたTrudinger-Moserの不等式とBrezis-Gallouoet-Waingerの不等式の同値性に問題を絞って考えた。この考察には、fractional integralを詳しく調べる必要があるが、「実解析学シンポジウム」(11月、大阪府立大)にてfractional integralに関する講演を複数聴いた際、fractional integralを調べるにはmodulation spaceを考えるのが自然であるという考えに至り、現在も研究中である。またTrudinger-Moserの不等式やBrezis-Gallouoet-Waingerの不等式は、Navier-Stokes方程式の解の評価をしようとすると自然に現れるものなので、「調和解析セミナー」(12月、東北大)に出席した際には、セミナー参加者とNavier-Stokes方程式のmild solutionの一意性について議論し、より精密な情報を得ることができた。
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