谷垣は、偏微分方程式の解の評価へ応用するのにどのような関数空間が最適であるか16年度から考察してきたが、本年度7月に国際研究集会「漸近解析と特異性」に参加した際に得た情報にもとづいて調査を行った結果、最適な関数空間は「シュレディンガー作用素に付随するBMO空間やHardy空間である」との結論を得るに至った。8月に国際研究集会「Harmonic Analysis and its Applications」に参加した際には、この観点から情報交換を行い、その結果、「偏微分方程式に応用するにはシュレディンガー作用素に付随したTriebel-Lizorkin空間という特徴づけが不可欠であり、そういった特徴づけはシュレディンガー作用素に自己共役性という条件を付加すれば可能であるが、応用上この条件を満たさないシュレディンガー作用素を対象としなければならない事例もあるので、この条件を弱めることに成功すれば大きな意味を持つ」ということが判明した。谷垣は、応用に支障を来たさない他の条件を強めるならば、自己共役性条件を弱めることができるという見通しを立てて計算中である。また、「ラプラス作用素に付随する関数空間の場合にフーリエ変換を用いた定義が有用であるのと同様に、シュレディンガー作用素に付随する関数空間の場合も一般化されたフーリエ変換を用いて定義できれば大変有用である」ということがわかった。谷垣は、これが可能であると推測して精査中である。さらに「シュレディンガー作用素のポテンシャルに逆ヘルダー条件を付けた場合に、シュレディンガー作用素の積分核についてある評価ができれば素晴らしい」ということが明らかになった。谷垣は、この評価が成り立つと予想して研究を進めている。
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