16-17年度と、Sobolevの埋ゆ込みの臨界ケースに発生する不等式(Trudinger-Moserの不等式、Gagliardo-Nirenbergの不等式、Brezis-gallouet-Waingerの不等式)を研究してきたが、近年非線形偏微分方程式はSobolev空間より一般的なBesov空間で考察されることが多くなっているので、Gogliordo-Nirenbereの不等式におけるL^PノルムやSobolevノルムをBesovノルムにしても成り立つことについて今年度は考察した。しかしその証明の中で、p≧1でしか成立しないYoungの不等式を用いているため、結果の数箇所で指数に本質的とは思われない制約がついてしまっている。一方この研究と並行して、16年度の報告書にも記載したmodulation空間について、埋め込みはどのようになり臨界ケースには何が起こるのか、普通modulation空間の指数は2つだけだが、第3指数として微分可能階数を表す指数を入れたとしたら、modulation空間のいろいろな性質はその指数の影響をどのように受けるのかについて調べていた。その中で、0<p<1の場合にmodulation空間のいろいろな性質を示すには、Fourier変換したときの台の直径に依存するある不等式(小林の不等式と呼ぶことにする)をYoungの不等式の代わりに用い、畳み込みf*9のL^pノルムをfのL^pノルムでおさえるというテクニックが鍵になることが最近わかった。ここでGagliardo-Nirenbergの不等式の研究とmodulation空間の研究が偶然に繋がった。すなわちGagliardo-Nirenbergの不等式のBesovノルム版の証明において、Youngの不等式の代わりに小林の不等式を用いたら、指数に対する本質的でない制約が外せるということである。ここに至ったのが今年度の終わりであったため、研究期間中に論文として発表することは残念ながらできなかった。
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