研究概要 |
本年度は昨年に引き続き,主に点配置空間から定まる高次元の力学系について研究した.まず東京大学の江口光昭氏と共同でn次元射影空間内のn+1次楕円曲線上にm(m>n+1)点を配置する空間の対称性について調べた.この空間にはある種のワイル群が作用することが知られているが,コホモロジー群へ作用を調べることにより,そのワイル群の作用(およびその合成によって得られる力学系の作用)を具体的に計算できることを示した。この手法は2次元の場合におけるLooigenja-坂井による周期写像の方法の一般化である.この結果をまとめてJournal of Mathematical Sciences, The University of Tokyo誌に投稿した. 次にパリ第7大学のB.Grammaticos氏,エコール・ポリテクニクのA.Ramani氏と共同でq差分第6パンルヴェ方程式の対称形式とミウラ変換---この変換は通常のベックルンド変換群には属さない---について研究し、通常のq差分第6パンルヴェ方程式とその対照形式がミウラ変換によって結びついているという結果を得た.またミウラ変換の双有理変換としての幾何学的意味づけを行った.これらの結果をAdvances in Difference Equation詩に投稿し受理された.このためにパリ第7大において2週間強の滞在研究を行った. 次に神戸大学の津田照久氏と共同で配置空間が点の配置ではなく,簡単な部分多様体を配置した空間の場合について研究した.これは梶原・野海・山田によって提出されていた高階q-差分パンルヴェ方程式を一般化した力学系に対応している.その結果全てのA,D,E型ワイル群の対祢性を持つ力学系を作ることができた.またτ関数を例外因子の軌道上の点の定義多項式として幾何学的意味を明らかにした.これらの結果については論文準備中である.
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