研究概要 |
今年度の主な研究内容は(1)非整数階微分方程式の解析とその可積分差分化(2)再生核としてのグリーン関数とソボレフ不等式の最良定数計算への応用の2点である.これら2点を中心に研究を遂行し,以下の研究成果を得た. (1)1/2階微分を含む流体方程式(チェン方程式,トルヴィクバグレイ方程式)についてピューズー展開法により厳密解を求めた.この解はミッターク・レフラー関数を用いて書き表すことができる.次に非整数階差分を定式化して,離散ミッターク・レフラー関数の構成に成功した.また非整数階差分の直接の応用として,これらの流体方程式の解を保存する(可積分な)差分スキームを構成し,数値実験によってその数値安定性を確認した.本研究成果は1編の論文として現在投稿中である. (2)グリーン関数があるヒルベルト空間の再生核になることを発見した.この事実をもとにして,ソボレフ不等式と呼ばれる不等式の最良定数および最良定数を達成する関数(最良関数)をグリーン関数の性質,特に関数の対角線値を詳細に調べることによって,計算することに成功した.具体的にはn次元ユークリッド空間におけるソボレフ不等式の最良定数をある偏微分方程式のグリーン関数の対角線値を調べることによって計算した.次に常微分方程式の境界値問題のグリーン関数がどのようなヒルベルト空間の再生核になっているか調べることによって,対応するソボレフ不等式の最良定数を計算した.本研究内容は2編の論文として,1編は発表,もう1編は現在投稿中である.またカナダのゲルフ大学において2005年7月29日〜31日に開催された国際会議International Workshop on Differential Equations and Dynamical Systemsにおいて発表した.
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