本年度は工学に登場する微分方程式の境界値問題のグリーン関数を求めて、その再生核としての構造を調べた。また再生核理論の応用によってソボレフ不等式の最良定数を具体的に計算することに成功した。本研究で得られた結果は次の3点である。 1.2M階微分作用素(d/dx)^2Mに対する周期境界値問題を設定した。これはある可解条件のもとで、解が存在し、そのグリーン関数(原初グリーン関数)から対称直交化法と呼ばれる手続きを行って、再生核グリーン関数を求めた。再生核グリーン関数は2M次ベルヌーイ多項式であり、またソボレフ不等式の最良定数はゼータ関数の偶数値で与えられる。本研究結果はScienticae Mathematicae Japonicaeに1編の論文として掲載された。 2.2M階微分作用素(d/dx)^2Mに対する自由端境界値問題を設定した。これはゼロ固有値をもち、固有関数はルジャンドル多項式で与えられる。1.同様原初グリーン関数から対称直交化法によって再生核グリーン関数を構成。再生核グリーン関数を構成する関数が超球微分方程式の解であることを示した。本研究結果はFar East Journal of Applied Mathematicsに1編の論文として掲載された。 3.1.の結果を差分化した。つまり離散ベルヌーイ多項式を構成して、離散ベルヌーイ多項式が再生核として果たす役割を調べて、離散ソボレフ不等式を定式化して、その最良定数を計算した。本研究結果は論文を現在投稿中である。
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