研究概要 |
伝播速度が異なるような非線形波動方程式系の初期値問題に対し、 (H1)非線形項がnull conditionを満たし,かつ2次の部分はdivergence formを持つ. (H2)非線形項がnull conditionを満たし,かつ2次の部分は未知関数の導関数のみを含む. (H3)非線形項がnull conditionを満たし,さらに同じ速度を持つ成分の導関数同士の相互作用も全てnull formで表される. という3条件を考えると、非線形項の全ての成分が、上記(H1)、(H2)、(H3)のうちのどれかひとつ(同一の条件)を満たしているならば、時間大域解が存在することが知られていた。成分ごとに上記3条件のうちの異なる条件を満たす場合について大域解の存在や解の存在時間などを調べるのが本研究の目的の一つである。今回、(H1)と(H3)の組み合わせに関して研究を進めていたが、(H1)と(H3)の双方を特別な例として含む、より広い新たな条件の下で時間大域解の存在を示すことができた(横山和義氏との共同研究;投稿中)。(H2)と(H3)を満たすような非線形項の組み合わせに対しては、時間大域解が存在しないような例が知られているので、上記の3条件の組み合わせとして残っているのは、(H1)と(H2)の組み合わせのみである。この点に関しては、来年度以降、研究を進めていく予定である。 また、最近になってLindblad-RodnianskiやAlinhac等によって、伝播速度が同じであるような非線形波動方程式系に対して、null conditionを拡張したような条件が提示され、いくつかの場合に大域解の存在が示された。このような方程式系の解は、null conditionを満たすような方程式系の解と比べて、挙動が違うことが期待できる。この方面に関しても、現在研究中であり、例えば特別な例に対して、エネルギーが時間とともに増加していくことを証明した(投稿準備中)。今後、この結果の一般化等も考察していく予定である。
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