研究概要 |
本研究は,可積分系の研究にこれまで現れてきたワイル群の構造を,「楕円ワイル群」というキーワードの下で拡張し,新たな可能性を見出すことを目的とした.特に,中心的なテーマとして, (1)ソリトン方程式とパンルヴェ方程式における楕円ワイル群 (2)直交多項式における楕円ヘッケ代数 の2つを設定して研究を行なった. テーマ(1)に関して,当初の計画では自己双対ヤン・ミルズ方程式の持つトロイダル・リー代数対称性を利用して,パンルヴェVI型方程式と楕円ワイル群との関係を探る予定であった.しかし,菊地哲也氏との共同研究で,3成分KP階層からパンルヴェVI型方程式導くことに成功したので,そちらについて研究を進め,以下についての論文を発表した: ・ソリトン方程式の相似簡約としてのパンルヴェVI型方程式(Lett.Math.Phys.79,221-234) ・q-ソリトン方程式からのq-パンルヴェVIの導出(J.Phys.A 39,12179-12190) これらの結果については,Isaac Newton Institute(Cambridge, UK)で行なわれた研究集会"Painleve Equations and Monodromy Problems : Recent Developments"にて発表した.また,自己双対ヤン・ミルズ方程式については,その双線形構造を議論した論文が,次の会議録に掲載された: ・Bilinear Integrable Systems : from Classical to Quantum, Continuous to Discrete(Eds.:L.Fadeev, P.van Moerbeke, F.Lambert), Kluwer(2006) テーマ(2)については,Askey-Wilson多項式を退化させて現れる一連の直交多項式に対して,どの程度楕円ルート系の構造が残るかを調べている(西澤道知氏,斉藤義久氏との共同研究).現時点でいくつかの結果が得られており,論文を準備中である.
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