17年度の研究は臨界ソボレフ指数をもつ非線型放物型方程式の時間大域解の漸近挙動を扱える形に、既存の抽象力学系の理論を拡張するものであった。非線型項の増大度がソボレフの意味で劣臨界である場合には、任意の古典的時間大域解はL^∞で時間大域的に有界であることが知られている。これより時間大域解のω極限集合は平衡点の集合に含まれることが導かれる。しかし非線型項の増大度が臨界指数の場合、16年度の研究で明らかになったように、L^∞増大現象を示す時間大域解が存在しえる。このような解の挙動は既存の力学系理論の枠組では扱えない。17年度の研究は、このような場合を含むよう既存の力学系の理論を拡張することが目的であった。 必ずしも軌道が相対コンパクトでない力学系を考える。これに対しLa Salle原理を拡張するため、軌道のStone-cechコンパクト化を考える。このもとで拡張されたω極限集合、拡張された平衡点、拡張されたLyapnov性を、軌道がコンパクトな場合には通常のものと一致するようにうまく定義する。すると、軌道が拡張された意味で強Lyapnov性をもつとき、拡張されたω極限集合は拡張された平衡点集合に含まれることが示された。力学系の漸近挙動の解析の観点からは、通常の平衡点ではないが拡張された意味での平衡点に収束する挙動が具体的にどのようなものかを明らかにすることは重要であるが、これは今後の課題である。
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