研究概要 |
1.手法の整備 Liouville型方程式(指数関数型非線形項を持つ半線形楕円形偏微分方程式)に関するblow-up analysis(コンパクトでない解の列の極限の解析)を、方程式の双対構造に着目して行なった。従来の議論(Ohtsuka-Suzuki,2003,Calc.Var.)では、解の列の極限に現れる爆発点が、非線形項の係数関数の零点に重なる場合を扱えなかったが、手法を改善し新たな知見として以下を得た。各爆発点における爆発の程度を表す量が、爆発点が零点に重ならない場合は一定であることは既知であったが、零点に重なる場合は零点の次数に応じてこの量が増加することが分かった。これは先行するBartolucchi-Tarantelloによる結果(2002,Commun.Math.Phys.)と一部重なるが、証明方法を簡明にできたため、仮定する条件を緩めることができた。さらに、爆発点が発生する場所の条件などの結論も得ることが出来た。 2.Liouville systemの解析 Liouville型方程式の方程式系(連立方程式)としての拡張はLiouville systemと呼ばれる。その一つであるSU(3)戸田方程式系に関する新たな知見として、これまでに存在証明が得られていた場合とは異なるパラメータの範囲で解の存在を示した。証明には変分法を用いたが、証明したパラメータの範囲では汎関数がPalais-Smale条件を満たさない為、変分法の一般論は使えなかった。その為、blow-up analysisと組み合わせる「Struweの方法」を用いて証明した。方程式系の各々の式を、未知係数を含む単独の方程式と見なすことで1.の研究成果を用いることができた。それに加え、方程式系としての双対構造に着目したblow-up analysisを行い、解の存在証明に足る結論を得た。
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