研究概要 |
本年度の研究では,反応・拡散・移流系に対する適切性(解の存在と初期値連続性)の証明と解の漸近挙動の研究を行なった.特に,三村・辻川による反応・拡散・移流系:大腸菌分布パターンに対するモデル方程式とMikhailov等による反応・拡散・移流系:化学反応表面吸着相転移モデルに対して,これを行なった.三村・辻川方程式については,感応性関数が特異性を有する場合について,解によって生成される力学系を調べることで,解の挙動を研究した:M.Aida, K.Osaki, T.Tsujikawa, A.Yagi and M.Mimura, Chemotaxis and Growth Model with Singular Sensitivity Function, Nonlinear Analysis : Real World Applications.6(2005),323-336.化学反応相転移モデルについては,解の空間を2乗可積分の減衰オーダをもつ空間に限った.その際,定数定常解はこの空間に属さないため,その周りの解の時間発展を追うことで困難を回避した:K.Osaki, Y.Takei and T.Tsujikawa, Global Solution to a Reaction Diffusion Phase Transition System in R^2, Adv.Math.Sci.Appl.14(2004),559-576. 現在は,反応・拡散系にみられるパターンで重要なスパイラルパターンについて,キネマティック方程式によるアプローチを行い,定常解の存在とその安定性を解析中である.この研究に関しては,ドイツ・マックスプランク研究所に所属のモデル提案者であるA.Mikhailovを訪れ研究ディスカッションを行なった.また,国内共同研究者との打ち合わせも行なっている.さらには,解の形状と時間発展の様子を調べるため,パーソナルコンピュータを購入し数値計算を行なっている. 反応・拡散・移流系に見られる六角形パターンについても,関数空間を正六角形関数のつくる部分空間に制限し,固有値0に対する固有空間の次元を1にし(京都大学・西田教授等の用いた方法),偶関数性を課した2重フーリエ級数を用いて120度回転不変性を持ったモードが分岐することを示す手法で,現在存在証明を行なっている.この研究に関しても国内研究者との共同研究ディスカッションを行った.
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