研究概要 |
銀河団内でのサブストラクチャーの運動にともなうガスの進化をRoe TVD法を用いた三次元流体シミュレーションを行って調べた。より現実的な状況を再現するために、メインクラスターの重力ポテンシャル内でのサブクラスターの運動を解き、そこから得られたメインクラスターとの相対速度等の進化を考慮にいれてサブストラクチャー周囲のガスの進化を計算した。その結果以下のようなことが判明した。単純にメインクラスターの外側から中心へ落っこちて反対側へつき抜けるような場合では、Kelvin-Helmholtz(KH)不安定性はあまり成長せず、ガスの流れの構造は大局的なままである。これは1E 0657-56銀河団などの観測結果をよく説明する。一方、メインクラスターの中心付近を振動するような場合には、KH不安定性だけでなくRayleigh-Taylor不安定性も良く成長し、数回往復するうちにサブストラクチャーのガスは周囲と混合し、乱流的な構造が現れる。これはA168銀河団などで見つかっている構造をうまく説明する。これらの結果はApJ,629,791として発表された。 また、より大域的な構造の進化を追うために、N体+流体のコード開発を行った。自己重力の計算には流体の格子法と相性の良いParticle-Mesh法を用いた。現在、国立天文台のVPP5000上でベクトル化および並列化をすませており、衝突銀河団の予備的な計算を開始している。その結果、サブストラクチャーのスロッシングに伴う複数組の衝撃波の発生および伝播、また銀河団全体にわたるような大規模な渦状の流れの発生などが確認できた。
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