すばる望遠鏡による暗黒物質探索と変動天体探索のために平成15年度に取得した観測データの解析を行った。その過程の中で、まず、奇妙な振る舞いを示す活動銀河中心核を発見した。母銀河に比べて非常に暗い中心核で、驚くべきことにわずか数日の間に中心核が大きく変動していた。このように早い時間変動は中心核が母銀河に比べて明るい活動銀河では今までに見つかっておらず、予想外の発見となった。詳しい理論的検討も行い、これはブラックホール付近の降着円盤からの放射の時間変動と解釈するのが妥当であるという結論を得た。このような現象は、我々の銀河中心からX線や赤外線で見つかっている現象と同様と考えられるが、系外の銀河では初めての発見であり、重要であると考えられる。この結果はThe Astrophysical Journal Lettersに掲載されるとともに、Nature誌のResearch Highlightsのセクションでも紹介されるなど、大きな注目を集めた。一方、暗黒物質に起因すると考えられる現象は残念ながら発見されなかった。しかし、上限値をつけることも重要であり、現在、厳密な上限を導き出すための解析作業を行っている。また、暗黒物質の有力候補であるニュートラリーノの対消滅に関する研究を推進するとともに、変動天体としての超新星から探る宇宙の星形成史や、超光度X線源と第一世代星の形成にともなう中間質量ブラックホールについての研究も推進した。
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