銀河の成り立ちを理解するためには、そこでの星間物質の進化過程を詳らかにする必要がある。特に、星間物質の主成分は水素なのであるから、構造形成に先立つ水素分子の形成過程に関して深い洞察が必須である。また、こういった水素分子形成の環境効果を把握するためには、ガスリッチな矮小銀河が最適である。なぜならば、そこでは、銀河形成及び進化への外因的な環境効果が少ないからである。初年度には、この水素分子過程への輻射場への影響を論文としてまとめあげた。興味深いことに、銀河形成に重要な水素分子形成へは、赤外線輻射による水素分子形成阻害が重要となる、新しい知見を本論文中で見出すことに成功した。赤外線輻射の起源としては、小質量星からの輻射の重ね合わせが重要となる。よって、銀河一般の進化を理解するためには、大質量星の形成史だけに注意を払うだけでは不十分であることが、本研究論文により明らかになったのである。その後、逆に大質星の進化過程の効果を考え、矮小銀河の進化を理解するためには、大質量星の効果が複雑系の物理として発現することを見出した。併せて、こういったガスリッチ矮小銀河が、宇宙の大規模構造の進化期に、実際にガスリッチであることを実証的に示すための議論も行い、これも論文としてまとめている。銀河が形成する際には、それに先立つ暗黒物質塊の形成が必要であり、この事実は、宇宙背景放射の詳細解析や信用に足りる数恒シミュレーションにより確立されたと思われる。その暗黒物質塊に銀河間物質が流れ込み、星形成が進むことで銀河が誕生していくのである。こういった一連の研究経験から、実際に銀河進化を理解するために、晩期型星の進化の理解も欠かせないことが改めて確認された。そこで、晩期型星の輻射場に強い興味があるため、恒星からの質量放出と輻射強度の進化を詳らかにしようと考えた。その結果、質量放出に伴う惑星状星雲形成と進化が、恒星晩年の輻射強度の進化と密接に結びついていることが、副産物の研究成果として得られた。この研究も学術論文誌に公表済みである。
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