天体現象の様々な場面で乱流現象が極めて重要な役割を果たしている。超新星爆発と同様に降着円盤においても磁気乱流が円盤の進化や構造を決めている。そこで我々は、降着円盤における磁気乱流の三次元数値シミュレーショシを行い、乱流の非線形進化過程を解析した。降着円盤における乱流は磁気回転不安定の成長によって駆動されている。飽和乱流状態の磁気応力の大きさが角運動量輸送効率を決めているため、磁気応力の飽和レベルが最も重要な物理量となる。我々は非常に多くのモデル計算を行うことによって、この飽和レベルのスケーリング則を数値的に求めることに成功した。飽和状態の磁気圧はガス圧の数パーセント程度であるが、磁気応力の飽和レベルはガス圧に弱く依存することがわかった。また、飽和状態の性質は円盤の回転軸方向の磁場がネットに存在するかどうかに強く依存している。乱流状態の平均磁場強度は激しい時間変化をしており、スパイク状の変動が特徴的に見られる。我々はこのスパイクの起源が、磁気回転不安定の最も不安定なモード(チャンネル流)の指数関数的増大とそれに続く磁気リコネクションによる散逸であることを明らかにした。チャンネル流はシアーを伴っているため、十分に成長するとシアー不安定になる。このシアー不安定が磁気リコネクションを起こすきっかけになっている。ここでの磁気リコネクションの性質は、いわゆる遅いリコネクションモデルの予測とよい一致を示していた。現在は数値的に導出したスケーリング則の物理的解釈を明らかにするため、乱流状態のさらに詳しい解析を行っている。
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