本研究により、PCおよびインターネットを基盤とした電波天文・VLBI観測システムを構築した。VLBI観測システムの構築のためには大容量のデータを取得および伝送、相関処理することが必要である。また大学独自の観測研究を行うために、汎用製品を活用することで安価な観測システム構築を目指した。システムはPC4台+4TBのHDから構成され、8MbpSのデータ速度の場合、約10日間(250時間)の連続観測を実現できる。4台のPCでデータを分散処理することにより、データ処理も観測時間とほぼ同一となる。本研究の最終的な目標は1000時間の連続VLBI観測であり、250時間分のバッファを持って観測を行うことで十分に初期の目標を達成できるシステムとなった。 このシステムを用いて、2つの研究テーマで観測を行っている。1つは岐阜大学11m電波望遠鏡とともに行う活動銀河核の短時間強度変動現象(IDV)のVLBI観測である。この観測は2004年から試験的に開始しており、VLBI観測に成功、および観測データの伝送・処理ルーチンの確立という成果を挙げている。この成功は今後の長時間観測の可能性を実証するものとして重要な成果である。また大学間で連携した観測を行うことで時間的制約の厳しい共同利用観測では不可能な観測内容を実現することができることにも大きな意義がある。2005年は上記のシステムを用いて本格的な長時間観測を実施する予定である。 同システムを用いたもう一つの成果は山口32m電波望遠鏡単一によるメタノール・メーザ天体の観測である。約1000時間に及ぶ観測の結果、15個の新メーザ天体の検出に成功するという成果を得て、新聞等にも報道された。これも大学で独自に行う電波天文観測の特徴=長時間観測の利点を実証したという意義がある。
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