XMM衛星の公開されているデータを用いて、銀河団に閉じ込められた高温ガスの重元素量、特に、酸素、マグネシウム、珪素、硫黄、アルゴン、カルシウム、鉄、ニッケルの分布を調べ、どのような超新星がどのような元素合成を行いうるか調べた。その結果、炭素爆燃形超新星では、今まで考えられていたよりも多量の珪素、硫黄、アルゴン、カルシウムを合成しうることがわかった。また、銀河団の大きさや場所にかかわらず、鉄と珪素の組成比は太陽の値に近かった。炭素爆燃形超新星で珪素を合成しうるとすると、鉄と珪素の組成比のみから、重元素の推定を行うことは難しくなる。酸素やマグネシウムは、重力崩壊型超新星のみで合成されるため、結局酸素とマグネシウムの観測が重要である。このような観測は現在、特に明るい数個の銀河団のみで可能ではあるが、検出器のエネルギー分解能が悪いために不定性が大きい。次の日本のX線天文衛星Astro-E2が打ち上げられれば、銀河団の中心部の明るい領域については、酸素やマグネシウムの精密な測定が可能になる。 早期型銀河の暗黒物質について、XMM衛星、チャンドラ衛星のデータを用いていくつかの楕円銀河については、求めることができた。銀河の中心部では予想されていたとおり、星の質量が支配的であり、暗黒物質はなくても矛盾がなかったが、銀河の外側で星の数倍の暗黒物質が存在することが、普通の楕円銀河については、はじめて確定した。今後は観測銀河を増やすとともに、銀河の大きさなどの性質と暗黒物質の分布がどのような関係にあるか調べる予定である。 我々の銀河系の明るいX線星からのX線を調べることにより、X線星と我々の間にある星間ガスの重元素量の組成比がわかった。銀河団の場合と同じように、珪素や鉄に比べて酸素やマグネシウムの組成比が低いことが確認された。これは我々の銀河系においても、炭素爆燃型超新星が、珪素を多く合成しうることを意味している。さらには、星間塵に閉じ込められている元素と、そうでない元素の比もわかった。天文学の観測では一般に、星間塵に閉じ込められていない元素のみが検出され、星間塵に閉じ込められている元素の割合は難しい問題である。X線の観測は、星間塵に閉じ込められている元素の量もわかるという点で画期的である。
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