平成17年度は、コードの改良、開発としては、ベクトル化率の向上、3次元コードの並列化、2次元および3次元熱伝導陽的計算プログラムの追加を行った。数値実験の実施としては、2次元、3次元の磁気熱不安定性に関する数値実験、原始星フレアに関する磁気流体・熱伝導数値実験を実施した。 国立天文台スーパーコンピュータにおいて、熱伝導を陰的に解く際に用いるBiCGstabコードのベクトル化率を99.5%まで向上させることができた。時間分割法により時間積分しているが、磁気流体計算に対して従来の熱伝導計算は時間を要していたが、半分以下に短縮することが出来た。 Parish & Stone(2005)により、磁気熱不安定性に関する2次元数値実験がなされた。彼らの条件と計算条件を同一にして、数値実験を行った。線形段階での不安定性の成長は、線形解析(Balbus2000)、Parish & Stoneと同様となりコードのテストとなった。不安定性の成長により、磁気エネルギーの線形的な増加後、増減の振動を経て、計算領域の等温化が達成されると準定常状態となり、磁気エネルギーは初期状態よりも増幅されるのが確認された。 3次元磁気熱不安定の数値実験を行った。不安定の成長は、磁気熱不安定と交換型不安定とがカップルし、2次元と比べ格段に早く成長することがわかった。これは、成層化された大気の混合に重要な役割を果たす可能性があることを示している。 開発を行った熱伝導計算コードを利用し、降着円盤と原始星との間の磁気的相互作用に関する数値実験を行った。これは、Hahashiら(1995)の原始星フレアのリコネクションモデルに、熱伝導計算を加えたものとなる。この結果、リコネクションにより解放された磁気エネルギーは、非等方熱伝導により効率的にエネルギー輸送され、最高温度は2ケタ程度下がることがわかった。
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