研究概要 |
本研究では、すばる望遠鏡による系統的多色測光観測によって構築された超遠方(4<z<7)銀河サンプルを用いて、遠方銀河のクラスタリング進化を観測的に定量化することを目的としている。小さな銀河が集合・合体を繰り返し現在見られるような大きな銀河に育ったという階層的銀河形成シナリオは、現在多くの観測結果と合致しているが、クラスタリングの進化を追うことはまさにその集合の過程を追うことにほぼ等価であり極めて重要である。平成16年度にはまずz=4,z=5のライマンブレイク銀河(LBG)サンプルを構築し、それらの選択関数・完全性の評価などを行った。またこの観測データと比較するために階層的構造形成モデルから観測と全く条件を揃えた擬似サンプルを注意深く作り出した。これらのサンプルを基に2体相関関数を用いてクラスタリング解析を行った結果、以下の3つの新しい知見が得られた。1.これまでの研究から指摘されていた光度によるLBGの相関関数の振幅の大きさの差異だけでなく、相関関数のベキも大きく光度に依存することを初めて明らかにした。2.この結果を理論モデルと比較した場合、観測に見られた光度によるクラスタリングの違いをダークマターハローの質量による違いだと考えるとうまく説明できることがわかった。3.このベキの違いは1つのダークハロー中に複数個の明るいLBGが存在することの結果であると考えられる。観測データについては、観測、データ解析、カタログ構築の方法について論文にまとめ発表した。また引き続きクラスタリング解析を行う予定である、別の銀河種族z=5.7,6.6のライマンα輝線銀河についてサンプルを構築した。
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