研究概要 |
本研究は、太陽コロナ中の小輝点(XBP)の動きから太陽コロナ中の微分回転則を精度よく求め、下層の光球で評価されている回転速度と比較して、光球-コロナ間の磁場のつながりを理解したいというところから出発している。この輝点は太陽直径が140万kmであるのに対し、その直径は2万km程度と小さく、太陽の自転にともなって移動する輝点の位置を追いかけることでコロナの回転速度を決めることができる。また、XBPはその発生頻度が太陽周期によって大きく変動することがないことや、太陽面全緯度にわたって観測されることから、太陽周期にわたって広い緯度幅で自転角速度を求めるトレーサとして利用できるという利点がある。使用するデータは、ようこう衛星で取得された軟X線画像である。初年度は、解析環境を整え、XBPを軟X線画像から抽出してデータベース化する解析ソフトを開発し、軟X線画像から微分回転速度場を求めるためのデータベースに変換するという前処理まで終えることを目標としている。実際には、全データの前処理までは終了することはできなかったが、1996年分のデータの半数の解析前処理まで終了し、そのデータを用いて微分回転角速度を評価するところまで実施することができた。初期結果を見ると、現段階で処理されたデータからは、赤道付近での回転角速度14.77deg/day、その統計精度がおよそ0.01deg/day(回転速度で2m/sec)と評価された。現在得ているXBPの回転角速度を算出する際には、コロナの構造を光球面に射影して求めているため、実際の角速度より大き目に評価されていると考えている(過去の研究によれば、光球磁場で評価したもので14.3deg/day,ドップラー速度で評価したもので14.0deg/day程度である)。XBPの構造を考慮してどのように角速度を評価するかは来年度からの課題である。
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